2006/12
高知県 Y様
2006年第9回 双眼望変鏡 カスタム最優秀賞作品
前にKIKUTA氏より「黄色いペンギン」コスモキッズを2台譲ってもらいました。もちろん双眼化の魂胆あってのことですが、何となく2年ほど死蔵しまいました。今回ようやく重い腰を上げて製作しましたので報告します。
コスモキッズの口径は約76mmですので、鏡をギリギリまで付き合わせたとしても目幅が76mm以上の人でないと使用できません。このように口径が目幅を超える場合、何らかの方法で左右の光軸をシフトして中央に寄せる必要があるわけですが、この点が代々の双眼望遠鏡製作者の悩みどころとなっていました。現在では松本式EMSをはじめ、いくつかの解決方法がありますが、今回のコスモジェミニでは
1 コスモキッズ独特の鏡筒形状を生かしたい
2 軽く作る
3 純正部品を極力利用(製作のしやすさ)
などの見地から、少々強引ではありますが主鏡の端を1cmぐらいずつカットすることにしました。これによって左右合計で2cmほど光軸が中央に寄りますので、56mmくらいの目幅も出せることになります。さらにその切断面に合わせて鏡筒も切り、鏡筒、接眼部なども純正のものを利用することとします。
さて、実際の製作です。まず、主鏡を切断するところから始めます。
マスキングテープと折り込みチラシでガードし、ダイヤモンドカッターを使って慎重に切っていきます。時々水で切り粉を洗い流すとよいようです。
切断所要時間は大体1枚一時間程度。手作業で慎重におこないますが、少々切断面が波打ってしまうのは避けられないようです。鏡が切れたら金ノコに持ち替え、鏡を貼り付けてある鉄板も一緒に切ってしまいます(主鏡の前に入っているバランス用のドーナツ状鉄板は外します)。
次に鏡筒の切断です。プラスチックなのでノコギリで簡単に切れますが、2次曲面であるコスモキッズの鏡筒をまっすぐに切るのは少し難しいです。鏡筒の中央線からの距離を測りながら油性マジックで点を打っていき、その点を結んで切断用のケガキ線を書きます。このケガキ線に沿って慎重に切断。出っ張っているところを目の粗い木工ヤスリで削って平面に仕上げます。
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切断後、内部はスプレー式の黒板塗料でつや消しの黒に塗りました。オープンになった内側の部分は、切断面の形に切った黄色の0.5mm厚プラ板をマスキングテープで止め、ホコリや迷光をシャットアウト。ただ、これによってどうしても左右鏡筒のインターバルが食われ、最小目幅は59mmぐらいになってしまいました。
2本の鏡筒は連結ステージにネジ止めします。このステージは前にサミットで田中さんに譲って頂いたもので、アルミをフライス加工? し、目幅調整と左右軸合わせ機構を盛り込みながらもコンパクトにまとめられた優れものです。これに取り付けることで双眼望遠鏡制作の一関門である「目幅、軸合わせ問題」はアッサリ解決。
次にマウント部分です。耳軸として塩ビの排水管VU150を採用。鏡筒が入るようにジグソーで切断し、ステージを固定しました。
この時点で耳軸まで含めた鏡筒一式重量が何と2.8kg(!)。これは7〜8cm級双眼鏡の重さです。もちろん手持ちもいけます。ノーマル・コスモキッズ単体の重量が1.2kg(バランス用の鉄板含む)ですから、「軽量化」という意味では割とうまくいったかもしれません。耳軸は15mm厚合板を木工ボンドで貼り合わせて作った架台に載せます。水平、垂直とも摩擦部分にテフロンを採用しましたが、バランス的には少し接眼側が重くなっているので、垂直側のテフロン支点距離を広く取り、摩擦を強くして鏡筒が「おじぎ」をしないようにしています。が、これによって垂直方向が少し渋くもなってしまいました。
架台部分、合板のままだとちょっとみすぼらしいのでスプレーでライトグリーンに塗ってみましたが、ちょっとこの配色は外した・・・・かもしれません。
なお、耳軸の右側にヒートンを2つつけて、直視ファインダーとしてます。
三脚は倉庫から発掘(笑)してきたミード製の軽量のものです。これに載せた「望遠鏡一式重量」が何と5.8kg! 片手で出せる軽量さです。
アイピースはカサイのEWV16mmで、19倍、実視界4度、瞳径4mmとなります。
とりあえず視野中心付近はなかなかシャープですが周辺はさすがにかなり崩れます。しかし僕はその辺をあまり気にする方ではなく、パッと見た目の広さが重要なので十分楽しく見ています。ピント合わせはアイピースの抜き差しになりますが、ちょっと渋いですね。
「バローを外し、視野絞りを削ったKIKUTA仕様」の付属アイピースも結構いいですねこれだと15倍、瞳径5mm、実視界4度です。
明るいニュートンのコマ収差を強引に補正するアイピースとしてはナグラータイプU16mmを2本持っているのですが、これらは重すぎてコスモキッズには厳しいです(そのままではピントも出ませんでしたし)。
こういった短焦点反射にはビクセンのLVW22mmもいいらしいですね。
また、このタイプの反射双眼では「倒立像」で、立体感は「リバース」となります。遠くのものが逆に手前に感じられます。地上の風景とか月の出を見ると面白いですね・・・・と思ったのも最初のうち、でした。どうやら人間、リバースならリバースでそれに慣れていってしまうみたいなんですね。最近では何とも思わなくなってしまったのでつまらんです。
この双眼望遠鏡はとにかく軽く、コンパクトです。僕は腰を据えて観望するという事が少なく「チョイ見」が多い、というスタイルですので最適の機材と言えるかも知れません。事実、稼働率は非常に高いです。
また、「第9回双眼鏡・望遠鏡サミット」でも常連の方々を爆笑の渦に巻き込むことができました。「ウケ狙い」という意味でも十分な成功をおさめたと一台と言えましょう(笑)。
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